研究概要 |
1.AILDにおける樹枝状細網細胞(FDC)の態度:パラフィン材料41例、新鮮凍結材料15例について免疫組織化学的、電顕的、分子遺伝学的検討を行った。その結果臨床的に多クローン性高ガンマグロブリン血症が認められたのは症例の70%のすぎないが、リンパ節では全例において多クローン性B細胞増殖が生じていることが明からとなった。この増殖巣は不規則な島状をなし、免疫芽球の出現を伴うとともに、Bリンパ球は表面IgM、IgO,J5を発現し幼若な形質をもつ、この部分に一致してFDCの増生が認められ、B細胞と接触しているが、正常リンパ濾胞と異なり、このFDCな網目状構造を形成いていない。異常に増殖したFDCは50%の症例において紘錘状細胞と毛細血管との集合巣としてHE標本でも認めることができ、これを"Kaposi肉腫様病変"と命名した。本疾患におけるFDCのマーカー(CR1,CR2,DRC,5′-N)には調べた限りで異常を認めなかったが、FDCしB細胞の相互作用に異常があることはほぼ間違いないものと考えられ、今後さらに検討を必要とする。 2.AIDSおよび関連疾患におけるFDCの態度:南カリフォルニア大学の協力をえてAIDS5例、カポシ肉腫5例の新鮮凍結材料を検索できた。AIDSの初期には著明な胚中心の過形成がみられ、これに一致してFDCのよく発達した網目状構造が認められる。しかし病勢が進行するとFDCの突起の消失、FDCの数的減少、網目の崩壊が生じ、これは胚中心の崩壊、胚中心におけるPC陽性リンパ球の減少と同時に生じる。またこの時期になると多クローン性B細胞増殖にも低下が生じる。以上の結果からAIDSにおいてもFDCは病勢の進展に密接に関っていると考えられる。 3.IPLにおけるFDCの態度:5例について検索したところ、全例とも胚中心内によく発達したFDCの網目を認めた。IPLは全く良性の経過をたどり、FDC自体は正常であると考えられる。
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