研究概要 |
1.HLA抗原の発現機序について 1)癌遺伝子の活性化との関連について---HLA class I 抗原やベーター2-ミクログロブリン(β_2m)の局在と癌遺伝子ras産生蛋白p21の局在を肝組織切片上で比較検討したが, 個々の細胞レベルではそれらの発現に明らかな関連性を見出しえなかった. 現在, C-myc遺伝子産物の発現との関連性を検討中である. 2)DNAのメチル化との関連について---培養肝細胞あるいは肝癌細胞形質膜上のHLA class I 抗原の発現はDNAのメチル化と関連していることが5-azacytidineを用いた実験で明らかになった. 2.HLA抗原と他の膜上分子の相互作用・相互関係について 1)肝組織連続切片上, B型肝炎ウィルス関連抗原の発現とHLA class I 抗原やβ_2mの発現の間に個々の細胞レベルでは関連性を見出しえなかった. 2)培養肝癌細胞上のHLA抗原とHBs抗原の発現増強がDMSOや5-azacytidineによる処置によって同時に誘導されることが示され, それらの抗原の相互作用を検討する際によい実験系となると判断された. 3)肝癌細胞や肝細胞形質膜上の上皮成長因子レセプター(EGFR)の発現の変動はHLA class I 抗原の発現の変動とよく合致することが明らかとなった. すなわち, 免疫組織化学的研究上, EGFRは正常肝細胞膜にほとんど指摘されないが, 肝炎や肝硬変など病的肝組織でその発現が明らかとなり, 肝癌細胞形質膜上で強く発現されることが示された. 3.マウスを対象とした実験が進行中である. また, 分子生物学的解析において共同研究が可能となったので, その方面の研究が進行中である.
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