研究概要 |
最近開発されたアスコルビン酸(AsA)合成不能ラット(ODSラット)を用いて, AsAのステロイド産出細胞に及ぼす影響を検討した. ODSラットを4週齢からAsA欠損状態で3週間飼育すると壊血病状態となり, 体重は対照ラットの65%にとどまったが, 副腎重量は対照ラットよりも16%大きく, 精巣重量は変らなかった. AsAが3週間欠如してもコルチコステロンの基礎分泌は維持され, また昼間に低く夜間に高い日内変動も損なわれなかった. 一方, テストステロンの基礎分泌量は減少傾向を示したが, 対照群で不明瞭だった日内変動はむしろ明瞭となった. AsA欠損ラットに副腎皮質刺激ホルモン(ACTH:2IU/day)を3週間連日投与すると副腎重量は無刺激のAsA欠損ラットの30%増となった. この副腎重量はACTH刺激AsA存在ラットよりも20%大きい値である. コルチコステロン産生はAsAの有無にかかわらずACTH刺激によって著明に増加した. また性腺刺激ホルモン(LH:200IU/day)の3週間連日投与によるテストステロン産生は著明に上昇した. AsA存在ラットと比べると, AsA欠損状態ではコルチコステロン, テストステロンとも組織内濃度よりも血中濃度がより高かった. これはAsA長期欠損によって肝の解毒能が低下したためと思われる. この長期刺激の成績とは対照的に, ACTHの急性刺激に対する副腎の反応とLHの急性刺激に対する精巣の反応は異なった. すなわち2IUのACTH1回刺激2時間後のコルチコステロン産生は良好だったのに対し, LH急性刺激に対する反応は遅延し減弱した. 副腎と精巣のコレステロール自給率の違いから判断すると, AsA欠乏によってコレステロールの合成酵素の活性が低下すること, およびACTHあるいはLHの慢性刺激によってその酵素活性が回復することが示唆された. AsAはステロイドホルモン産生に必須ではないが, 酵素活性の調節因子として働いていると思われる.
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