トキソプラズマ症の免疫診断への実用化を目的としてToxoplasma gondii抗原蛋白のcDNAのクローニングをおこなった。tachyzoiteからのRNAの調製法を検討し、グアニジンチオシアネートと熱フェノールを用いる方法がもっとも翻訳活性の高いRNAを得ることができた。さらに、翻訳産物を感染ヒト血清をもちいて免疫沈殿した結果、抗原活性をもつ27KD、31KDおよび35KDの分子量の蛋白を認めた。この中で、27KD蛋白は最も強く感染血清と反応し、診断用抗原として有効と考えられた。そこで、この蛋白のcDNAを得るためにtachyzoite由来λgt11cDNA expression libraryを作製し、感染ヒト血清をもちいて免疫学的スクリーニングをおこなった。3×10^4個のクローンをスクリーニングし、26個の陽性クローンを得た。epitope selectionをもちいて精製した抗体を て抗原とcDNAの対応関係を決定し、27KD蛋白に対応するcDNAクローン(λTg18)を同定した。そこで、27KD抗原遺伝子の構造と発現について調べるため、このcDNAをプローブとして、tackyzoite由来のゲノムDNAおよびmRNAをもちいてSouthernおよびNorthern blot assayをおこなった。その結果、27KD蛋白はゲノムDNAの約13kbのEcoRI断片にコードされ、約1400ヌクレオチドのRNAとして転写されることが示された。このRNAより翻訳された蛋白は27KDと32KDの蛋白としてtachyzoiteに存在することが、Nativeな蛋白をもちいたWestern blot assayの結果、明らかとなった。大腸菌に合成されたλTg18とβーgalactosidaseの融合蛋白はT.gondii感染血清と特異的に反応し、他の原虫感染血清とは交叉反応を認めなかった。さらに、cDNAの塩基配列を決定し、174アミノ酸残基のopen neading frameをλgt11のβーgalactosidase遺伝子とin frameの状態で認めた。既知の遺伝子との相同性は認められなかった。
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