研究概要 |
IgEの産生は蠕虫感染に特徴的な宿主反応である. しかしながら, 感染によるヒトのIgE産生の機序についてはほとんど解析が行われていない. 本研究は, 患者の末梢血を材料として以下の検討を行った. 1.FcεRリンパ球:IgE産生の調節に関与するとされるFcεRリンパ球について各種のモノクローナル抗体で螢光染色し, フローサイトメトリーによる解析を行った. 肝吸虫症および包虫症患者のFcεR陽性リンパ球の大部分はBリンパ球で, その発現頻度は健常人のそれと同等であった. またFcεRをもつリンパ球のほとんどが補体レセプターをも発現していた. さらにFcεRは37°C30分の培養で細胞表面から遊離することが判明した. 2.IgE結合因子:IgE産生調節因子とされるIgE結合因子を2種のモノクローナル抗体を用いて定量した. 肝吸虫症患者の血清中のIgE結合因子量は健常人の平均と有意な差を認めなかった. FcεRおよびIgE結合因子の結果から, 蠕虫症におけるIgEの産生は, アトピー等の高IgEとは異り, 健常人の背景を保ったまま高IgEとなっていることが示唆された. 3.自発的IgE産生細胞:肝吸虫症患者の末梢血からBリンパ球のみを分離し培養すると自発的IgE産生を起す. この細胞は, 抗原, Tリンパ球, マクロファージの助けなしにIgEを産生し, X線照射に耐性で, 抗IgE抗体による処理でIgE産生の抑制を起す性質をもつ. 蠕虫症の持続的高IgEの機序として自発的IgE産生細胞の関与が示唆された. 4.抗IgE自己抗体:鉤虫症および肺吸虫症患者の血清中には, 抗IgE自己抗体が検出された. これはIgGで血清中の総IgE値と相関した.
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