研究概要 |
女性の活発な社会進出が目立つ今日, 昼夜交替勤務や経線通過飛行などの変速的な作業-生活時間環境が女性の生殖生理機構へ及ぼす影響を把握する意義は大きい. そこで, 本研究は, 実験動物モデルを用いて, 非24時間日周期が妊娠の成立, その経過, 及び胎仔(中期胚および満期胚)へ及ぼす影響を検討した. 成熟ICRマウスを, 交配の少なくとも2週間前から, 22時間(11:11時間明暗周期), 24時間(12:12)あるいは26時間(13:13)の日周期ま人工証明下で飼育した. 明期2時間交配によって得た妊娠マウスを, 交配から278時間目(妊娠120日)あるいは408時間(17.5日)に開腹し, 胎仔数, 胎仔体重, 肢芽の分化状態(指放線間隙数)および形態異常の有無について観察した. 交配率を見ると, 22時間および26時間の非24時間日周期群で, 40-50%と著しく低下した. また, 妊娠12.0日の観察では, 胎仔の発育や肢芽の分化に遅れが認められ, とくに26時間日周期群で着床数の減少や吸収・死亡胎仔数の増加がみられた. 妊娠17.5日においても, 胎仔体重が24時間日周期群の平均1.04gと比較して, 22時間群で0.95gと低下していた. しかし, 奇形の出現頻度の増加は見られなかった. なお, 妊娠機関中のみ非24時間日周期環境で飼育した場合にも, 吸収・死亡胎仔数の増加する傾向がみられた. 以上のことから, 妊娠前および妊娠中の日周期の変化が体内リズムの乱れをひきおこし, 妊娠の成立や胎仔の発育に悪影響を与えることが示唆された. 今後は, さらに早期胚を用いて, 非24時間日周期環境の排卵と受精のtimingなどへの影響について検討する予定である.
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