研究概要 |
本研究は学童期の血圧レベルを明かとし、それが成人に達するまでにどの様に変化するのか、および、児童とその両親の循環器検診成績の相関と、尿中カリクレイン,Na、Kの比較検討、さらに、食生活を中心とした生活環境調査などにより、高血圧の発症に関連する近年における環境要因の変化および宿主要因とを明らかにすることを目的とした。 対象は秋田県内農村地区の井川町中学3年生で、昭和54年より平成元年までの11年間循環器検診を実施した。さらに,その間のうち昭和54年より58年までの5年間の受診者については、その両親の循環器検診成績との比較を行い、また,昭和55年より59年までの受診者については5年後の20歳時の検診成績との推移についての比較も行った。なお、研究費より備品として購入したパ-ソナルコンピュ-タ-(NEC PC-9801VX)は、これらデ-タの整理と統計解析に使用した。 その結果、男子の最大血圧平均値は常に女子より高く、また、項目間の相関については、男女とも最大血圧・最小血圧と身長、体重、肥満度と有意の相関が認められた。さらに、両親の血圧との比較では、最大血圧について男女とも母親との間で有意の相関が認められた。一方、中学生時と5年後の血圧レベルを比較した結果では、最大血圧ー最小血圧とも平均値で10mmHg以上の増加がみられたが、5年間をはさんでの相関は統計学的に有意で、いわゆるtracking現象が認められた。しかし、栄養調査による食塩や各種栄養素,あるいは尿中カリクレイン、Na、Kと血圧レベルとの比較では、いずれも有意の相関は見られなかった。 これらの結果より、中学生時点の血圧レベルより将来の傾向をある程度は予測でき、また、両親、特に母親の血圧レベルとの相関が認められることが示された。なお、中学生の血圧値と食生活あるいは代謝機能などとの関連については、さらに検討が必要と結論された。
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