研究概要 |
関節滑膜の表層細胞の増殖・重層化は慢性関節リウマチ(RA)に特徴的な初期病変で, 病因上発症に重要であるが, これに関与する因子としてEpidermal growth factor(EGF)を組織化学的に同定し検討した. 方法はRA(16), 変形性関節症OA(1), 外傷(3)より得た関節滑膜をPLP固定後細切し, 家兎抗ヒトEGF抗体, ペルオキシダーゼ標識抗家兎抗体, ジアミノベンチジンと順次反応させ, 光顕及び電顕下に観察した, 抗体はマウスEGF, PDGFと交叉せず, 組織化学的特異性の確認には非免疫家兎血清, EGF吸収抗EGF抗体を用いた. 結果としてEGFはRA, OA, 外傷全例の滑膜表層細胞に限局して陽性で, 特にRAで濃く染色され, EGFは表層細胞の重層化に一致比例して増加していた(r=1). 電顕下にEGFは滑膜表層A型細胞の表面及びB型細胞の胞体・粗面小胞体に局在し, B型細胞によるEGF産生とEGFのA型細胞への作用が示唆された. 一部のリンパ球集団はEGF陽性であったが, これは滑膜表層のEGFと相関せず, 血管からのリンパ球遊出とむしろ相関しており(r=0.81), 滑膜表層のEGFにはリンパ球誘導能のないことが示唆された. また滑膜表層のEGF染色は組織の血管新生と有意の相関があり(r=0.71), 滑膜表層から産生されたEGFが, 炎症の進展に基本的に重要な血管新生の促進因子である可能性が示された. また電顕的研究からEGFが粗面小胞体からゴルジ装置を経て分泌されることが示され, EGFの産生が他の蛋白質特に分泌蛋白質と同じ合成・分泌経路を経ることが明らかとなった. このようにEGFはRA初期の特徴的病変である滑膜表層細胞の増殖・重層化に関与する因子であり, RAの滑膜病変の進展・慢性化にきわめて重要な因子であることが推定された.
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