研究概要 |
膠原病における抗核抗体の診断的意義は明らかになりつつあるが, その病因的意義は不明である. そこで疾患特異性の高い抗U1-RNP抗体, 抗Sm抗体, 抗SS-B抗体, 抗Scl-7c抗体の病因的意義を求めることとした. 〔方法〕(1)抗原の精製:仔牛胸腺抽出物, 幼若家兎胸腺抽出物よりアフィニティーカラム, 高速液体クロマトグラフィーにて行った. (2)精製抗原を用いたELISAの開発. (3)抗核抗体に対するモノクローナル抗イディオタイプ抗体の作成:純化抗核抗体をマウスに免疫し, 細胞融合法によりハイブリドーマを作成し, 抗イディオタイプ抗体産生株のクローニングを行った. 〔結果〕(1)高速液体クロマトグラフィー(TSKgalG3000SW)にてU1-RNP抗原より分子量32000および16000のポリペプチドが分離され, それぞれU1-RNP, Sm抗原活性をもつことが判明した. 本抗原を用いてELISAを行ったところ, 抗U1-RNP抗体, 抗Sm抗体を特異的に, 高感度で検出しえた. これにより他の方法にて検出不能であった抗Sm抗体を腎症MCTD例の急性期に検出でき, 臨床的有用生が確認された. (2)純化Scl-70抗原は分子量70000から95000の4本のポリペプチドで構成されていた. 本抗原を用いて免疫ブロット法を行ったところ, 沈降反応で陰性であった血清より新たに3例で抗Scl-70抗体が検出され, いずれもが強皮症例であった. (3)抗U1-RNP抗体に対するモノクローナル抗イディオタイプ抗体の作成に成功した. 本抗体は抗U1-RNP抗体陽性血清の57%と交差反応性を示し, in vitroでMCTD患者リンパ球の抗U1-RNP抗体産生を抑制した. 〔結論〕抗核抗体の病因的意義を明らかにする上で, 対応抗原の精製, 高感度特異的抗核抗体検出法の開発, 抗核抗体の産生・調節機構の解明が重要であることが明らかとなった.
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