研究概要 |
本研究では胆汁分泌とその障害による肝内胆汁うっ滞発生機構の解明を目的にCytoskeletal systemとその調節因子について,健常肝,in vivoならびにin vitroでの実験的急性肝内胆汁うっ滞モデルおよびヒト急性,慢性肝内胆汁うっ滞生検肝を用い免疫蛍光あるいは免疫電顕酵素抗体法,,電顕細胞化学ならびに微小部X線分析法により究明した。calciumおよびactinの分布とその変化はコンピュ-タ-システムを用いた画像解析により定量化し,毛細胆管の収縮性は超微速度映画撮影により動的に解析した。その結度,肝細胞内,特にBC周囲のCa^<++>,Ca^<++>結合蛋白質calmodulinおよびCa^<++>ーMg^<++>ーATPaseの存在はactin系を介する毛細胆管(bile canaliculus:BC)の収縮機構に必須であることが証明された。そして,これら三因子のいずれの低下もBCの収縮障害,すなわちBCの弛緩性拡張を起こすと考えられ,肝内胆汁うっ滞の発生要因として重要であることが判明した。 原発性胆汁性硬変(PBC)患者血清中における抗actin filament(AF)抗体,抗intermediate filaments(IF)抗体の存在は継代培養細胞株(_3T_3,PtK_2)を用い,胆管上皮細胞内における主要組織適合性抗原(major histocompatibility antigen:HLA)のclass IIに属するHLAーDRの存在の有無は生検肝組織を用いて免疫蛍光抗体あるいは免疫酵素抗体間接法により検討した結果,PBC患者血清中に出現する抗IF抗体の抗原性は胆管破壊の結果遊出する胆管上皮細胞内のIFに求められる。抗AF抗体の抗原性は,初期には主として胆管上皮細胞管腔側形質膜直下に増生するAFに求められる。stage II以降には拡大した毛細胆管周囲に増生するAFの細胞外遊出が抗AF抗体の産生を促がすと想定される。さらにPBC患者の生検肝組織を用い免疫蛍光抗体あるいは酵素抗体間接法で観察した結果肝内胆管上皮細胞内にHLAーDRが異所性に証明され,cytotoxic/suppressor T cellが,この抗原性を認識して反応し,胆管上皮細胞が破壊される可能性が示された。
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