研究概要 |
《研究目的》血液高IgE値・高IgE抗体価を持ちながら, 喘息症状の合併が必ずしも多くないアトピー性皮膚炎患者に, ダニ抗原を用いて吸入誘発試験を実施し, 気道収縮反応・気道過敏性の変化を観察し, 気管支喘息患者と比較検討した. 《方法》アトピー性皮膚炎(Atopic Dermatitis:以下AD)患者16名を, 喘息の既往・合併の有無により, 以下の3群に分けた. A群:既往なし 11例, B群:小児喘息の既往あり 3例, C群:気管支喘息合併例2例, 各群における血清IgE値(IU/ml), ヤケヒョウダニ特異的IgE抗体(以下抗ダニIgE抗体)(PRU/ml)の平均値は各々A群11244,209. B群・13511,220. C軍5855,182であった. 上記3群の患者に, ヤケヒョウダニ抗原を用い, 日本アレルギー学会標準化案に則り, 吸入誘発試験を実施し, 前後で標準法により気道過敏性の測定を行なった. データの有意差の検定は, 多重比較法及びStudentのpaired t-testを用いた. 《結果》A群中の例に, B・C群では前例に即時型喘息反応が誘発された. 遅発型反応は, C群の1例にのみ認められた. 吸入前後で, 気道過敏性の有意な変化は認められなかった. A群陽性例中3例は, 気道過敏性の認められない症例であった. 吸入誘発陰性例2例(A群)では, 陽性各群に比して, IgE抗体価, 抗ダニIgE抗体/総IgE値が有意に(P<0.05)低かった. これに対して, 総IgE値, IgG1及びIgG4抗体価は, 各群問に差は無かった. 《結論及び考察》(1)喘息の既往や気道過敏性の無いAD患者においても, 即時型反応を誘発し得た. (2)この結果は, Bruceらによるアレルギー性鼻炎に対する吸入誘発の報告を考え合わせた時, 同一抗原に感作状態にあるアトピー性疾患各群における気道反応の共通性を示唆していると考えられた. (3)陰性側では, IgE分子が, 抗ダニIgE抗体のマスト細胞への結合を競合的に阻害している可能性が考えられた.
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