研究概要 |
本研究においては, 健常人を非喫煙者と喫煙者に分け, サルコイドーシス, 特発性肺線維症(IPF)を疾患対象とし, 非喫煙者症例に限定して検討した. 気管支肺胞洗浄によって得られた肺マクロファージ, 肺リンパ球を用いて, これら細胞のサイトカイン産生状況から, このような疾患成立の病態生理において肺の免疫制御機構がどのように作用しているかの考察を行うことを目的とした. 検討対象としたサイトカインは, マクロファージの産生するIL-1,IL-1抑制因子, Tリンパ球の産生するIL-2である. 無刺激下の培養条件では, 健常非喫煙者と健常喫煙者, サルコイドーシス, IPF症例の間において上述のサイトカイン産生能において有意の差は認められなかったので, IL-1,IL-1抑制因子産生においてはLPS刺激培養, IL-2産生においてはPHA刺激培養下の上清を用いた. 1.喫煙者では非喫煙者に比較して, IL-1産生亢進, IL-1抑制因子産生低下, IL-2産生亢進傾向が認められ, 喫煙によって各種刺激に対する免疫反応の亢進が準備されていることが示された. 2.サルコイドーシスでは, IL-2産生亢進が認められたのに, IL-1,IL-1抑制因子に関しては亢進も低下も認められなかった. このことは, サルコイドーシスにおける類上皮細胞肉芽腫形成反応が, マクロファージの活性化を介さずに, 直接リンパ球の活性化からスタートする可能性を示している. 今後, 遺伝学的レベルにおいてマクロファージとTリンパ球の活性化状況を比較検討する必要がある. 3.IPFにおいては, 喫煙者と同様, IL-1産生の亢進, IL-1抑制因子産生の低下, IL-2産生の亢進が認められた. マイクロファージの活性化を更にγ-IF,CSF,Fibronectin,PDGFなどのレベルから検討を加える必要性が示唆された.
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