研究概要 |
副鼻腔気管支症候群症例31例(内訳はびまん性汎細気管支炎10例, 気管支拡張症6例, 中葉舌区症候群7例, カルタゲナー症候群4例, 慢性気管支炎4例)に対して気管支炎支線毛の運動周波数および透過電顕による超微形態の検討を行ない下記の知見を得た. 1.びまん性汎細気管支炎(以下にDPBと略す)10例中4例に線毛の内側ダイニン・アームの欠損を認めた. そのうち2例は原発性線毛運動不全症であった. 2.カルタゲナー症候群4例全例で線毛の運動欠如とダイニン・アームの欠損を認めた. 3.上記2疾患以外では機能的にも形態的にも線毛に異常を認めなかった. 1.の知見は未だ不明とされているDPBの病因が複数で成立っていて, 線毛の先天的機能不全もその病因の一つである可能性を強く示唆するものと考えられ, 現在更に症例の蓄積に努めている. 昭和62年度中に上記引症例を含めて計62例の慢性気道疾患症例をも集め京大病院耳鼻咽喉科と共同で詳細な検討をすすめている. その結果の一部はS63年4月の第28回日本胸部疾患学会総会で, "耳鼻科的アプローチも含めた慢性気道疾患の臨床的検討"として発表する. 線毛運動促進物質の検索に関しては予備実験でそれに該当する物質を見出すには至らなかったが, 気管支肺胞洗浄液の添加によって線毛運動周波数の増加傾向をみとめており, 今後は更に多数例の肺胞洗浄液について線毛運動への影響を検討すると同時に, 気管支肺胞洗浄液中に存在する物質の中でもとりわけ粘液線毛輸送系への関与が注目されている肺サーファクタントの線毛運動への影響を検討する予定である.
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