研究概要 |
気管支喘息の主たる病態生理異常である気道過敏性の発症に与る好中球・好酸球の役割について検討する目的で以下の実験を行った. 1.イヌ, モルモットにECF-Aを吸入させても気道過敏性は生じなかった. また, 気管支肺胞洗浄液(BALF)にも好酸球の増加は認められなかった. この実験からは気道過敏性の発症に好酸球が関与している可能性は分からなかった. 2.イヌ, モルモットにオゾンを暴露し気道過敏性モデルを作成し, その時のBALFの好中球・好酸球の変動を観察した. イヌではBALFの好中球の増加がみられたが, 好酸球の増加は認められなかった. これに対し, モルモットでは好中球・好酸球ともに増加がみられた. この結果より, 気道過敏性とともに気道に浸潤してくる炎症細胞には種差があると考えられた. しかし, これらの細胞が気道過敏性の原因として作用しているのか, 気道過敏性の結果として遊走してくるのかは不明であった. 好中球・好酸球の役割をより明確にするためには, 摘出気道平滑筋にこれらの細胞を加えた時, 平滑筋の反応がどの様に変化するかを確かめることが必要と考え, 新たにin vitroの実験systemを組み立てた. 現在までに, このsystemを用い, 1.摘出ヒト気管支平滑筋では無処置の状態において緩やかな収縮が発生し, この緩やかな収縮は, leukotrienes,prostaglandins(PGs),ocetylcholine(ACh)によって生じているものと考えられた. 2.ヒト気管支平滑筋では, 迷走神経末端からのACh放出をPGE_2が抑制している. 3.モルモットではsubstance Pが迷走神経末端からのACh放出を促進する. 4.イヌ気道平滑筋においてthromboxaneは迷走神経末端からのACh放出を促進している可能性が考えられる. 等の結果を得ている. 今後は, ヒト血液より好中球・好酸球を分離しin vitroの平滑筋標本に加え, 平滑筋の収縮特性および迷走神経末端からのACh放出がどのような変化を受けるかを検討する予定である.
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