研究概要 |
1.ヒト血清でCNP抗体の力価を検定するための感度のよい方法を確立した. 抗原にはウシCNPを用いenzyme-linked immunosorbent assayで測定した. 抗ウシCNP血清(ウサギ)に対しては300万倍希釈まで測定することができた. 2.各種脱髄疾患患者の血清でCNP抗体をスクリーニングした. 対照にくらべて有意に高い値を示したものは多発性硬化症21例中3例, 亜急性硬化性全脳脳炎1例, 急性炎症性脱髄性多発神経炎8例中2例, 慢性炎症性脱髄性多発神経炎6例中1例であった. マイコプラズマ感染後の多発根神経炎の症例では経時的にIgG及びIgM抗CNP抗体の測定を行なうことができた. 病勢の極期にはIgM抗体が高く, 回復期には低下した. IgG抗体は急性期よりも回復期の方が高値を示した. 以上のように中枢及び末梢神経系の脱髄疾患の一部の症例でCNP抗体の力価が高値を示した. これらは脱髄の結果として出現した2次性の抗体である可能性もある. マイコプラズマ感染後の多発根神経炎の症例のように, 力価の変動が病勢のマーカーとして用いられ得る可能性も示唆された. 3.マウスCNPのcDNAクローニングを行なった. 得られたcDNAは460bpで, 翻訳領域の5'端に近い部分であった. ノーザン・ハイブリッド形成では, ウシやヒトと異なりmRNAバンドが2本検出された. 4.quakingマウスでは, ノーザン・ハイブリッド形成のシグナルが, CNP活性に呼応して低下していた. myblin-associated glycoproteinのノーザンシグナルはquakingマウスで増加していて, CNPとは対照的であった. 今後jimpyマウスなど他のミエリン形成不全マウスを用いて研究を進める計画である.
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