研究概要 |
適正な降圧治療を行うことにより高血圧による血管障害や臓器障害の進行を未然に防ぎ改善することが高血圧治療の目標である. しかしながら, 血管障害や臓器障害の可逆性は, 生体自身のもっている事故調節に作用や加令などの影響をうけ, 変化する可能性も考えられる. そこで高血圧症状の自然経過との治療制御について自然発症高血圧ラット(SHR)血行動態変化の基礎的検討を試みた. 本年度は, 高血圧発症前期(4週令), 高血圧発症機(8週令), 高血圧安定期(1, 2週令), 高血圧性血管障害進展期(24週令)の各期におけるSHRについて, 放射性マイクロスフェア法を用いた全身および各臓器の循環器の循環動態計測を行い, 正常血圧対照ラット(WKY)の結果と対比検討した. 全身循環では, 初期の段階で心拍数の有意な増加によって示されるhyperkineticな状態が観察され, 総抹消抵抗の有意な上昇が8週令から24週令にみられた. 各臓器の循環動態では, 臓器血管抵抗は腎臓・腎臓で高血圧発症前期から発症期にかけて, 一方脳では臓器障害進展期に初めて上昇がみられた. 心拍出量は, carcass(主として筋肉・骨・皮膚からなる)への分布が高血圧発症前においての有意な増加がみられ, 8週令移降では腎臓への分布が有意の上昇を示した. さらに, 神経細胞に存在するとされるmicrotubule associated protein 2(MAP2)およびα-tubulinなどに対する高血圧の影響について免疫組織化学的検討をおこなっている. また, 高血圧安定期である12週令において, SHRとWKYの胸部大動脈の各種薬剤についても検討した. その結果, プロスタグランディンF_<2d>による収縮やVIPによる弛緩反応がSHRとWKYで異なることが示された. 以上の結果から, SHRH週令の進行, 言い換えれば高血圧の病期進展ともに, 正常血圧対照であるWKYとは明らかに異なる血行動態変化を起こすことが示された.
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