研究概要 |
麻疹ウイルスの構成ポリペプタイド(HA69K,NP60K,F40K,M36K)それぞれに対するマウスモノクローナル抗体をマウス腹水として得た。 これらのモノクローナル抗体を用いて、麻疹ウイルスLEC株を感染させたVero細胞、麻疹ウイルスSchwarz株の持続感染細胞であるNC-37細胞内のウイルス抗原の所在を確認した。この結果いずれの細胞でもHA,Fは細胞表面と細胞質の表面附近に、Mは細胞質の核周辺に、NPは核内と細胞質の核周辺に存在していた。 免疫不全状態に発症して死亡した2例の巨細胞性肺炎患児の剖検肺組織に上記マウスモノクローナル抗体によってdetectされる麻疹ウイルス抗原を同定した。死亡時において、肺組織の巨細胞に一致してすべての構成蛋白が存在することから、この疾患は麻疹ウイルスの無制限の増殖の結果発来する間質性肺炎による呼吸不全を直接死因とする事が想定された。 麻疹ウイルスの脳内持続感染に起因するSSPEに罹患した患者2例(1985年発症の14才女児、1988年発症の8才男児)は現在inosiplexとTransfer Factorの治療中であり、それぞれJabbourの第1期、第2期にある。この2例の患者から得られた脳脊髄液(CSF)用いてウイルス学的検索を行なった。麻疹抗体はHIでそれぞれ4X,32X,CFでそれぞれ8X,8Xであった。可溶化した麻疹ウイルスのSDS-PAGEによるWestern bolttingによって髄液中の抗体はHA,NP,Mと特異的に反応してバンドを形成した。また等電点電気泳動で、両者の髄液中にoligoclonal bandsが証明され、IgGと同定サレタ。しかしながら髄液中の細胞からは麻疹ウイルスは分離されず、モノクローナル抗体による蛍光染色によって麻疹ウイルスの構成ポリペプタイドは同定されなかった。
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