研究概要 |
ヒト低親和性IgE受容体(FcεR2)の発現調節機構の解析およびアトピー疾患小児におけるリンパ球上のFcεR2発現と血清中soluble FcεR2量の測定を行った。小児の末梢血FcεR2陽性細胞数および血清soluble FcεR2は加齢と共に減少したが、アトピー疾患児では、血清IgE値急激に上昇して最高になる3歳までの時期に、非アトピー群に比して有意に増加しており、FcεR2発現増強機構とIgE産生機構の活性化が深く関連していることが示された。ヒト末梢血においてFcεR2は、PHA、Con A、LPFなどのマイトジェン刺激によりTリンパ球が産生する因子によリンパ球上に発現され、副腎皮質ステロイドはこれを抑制した。ヒト単球細胞株U937では、フォルボールエステル(PMA)、γーインターフェロン(IFN-γ)、IFN-α、2′,5′ーオリゴアデニル酸(2,5ーA)はFcεR2発現を増強し、副腎皮質ステロイドはこれを抑制した。PMAはプロテインキナーゼCの活性化を介して、IFN-αは2,5ーAを介して、その作用を発揮すると考えられたが、IFN-γの作用はそのいずれの機序によるものでもなかった。FcεR2 mRNAの解析により、PMA、IFN-γはFcεR2 mRNAの発現を増加させたが、IFN-α、2,5ーAではその増加は認められなかった。副腎皮質ステロイドはFcεR2の発現をそのmRNAレベルで抑制した。本研究により、小児アトピー疾患患児におけるFcεR2発現の特異性を明らかにし、その臨床的意義を明らかにすることが出来た。また、FcεR2の発現調節機構をリンパ球や単球細胞株を用いて詳細に検討したことにより、FcεR2を介する免疫応答を人為的に調節するという今後の研究の基礎となった。
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