研究概要 |
ビタミンD依存性くる病II型は1,25(OH)_2D_3に対する標的細胞の受容体を含めた作用経路の障害に基ずく疾患である。我々は本症の5症例を診断した。3幼児例に新しい治療として1α(OH)D_3の大量投与を行った。2症例では3μg/kg/日の1α(OH)D_3投与によりくる病が改善治癒した。治療前には著しい低値を示した血中24,25(OH)_2D濃度は増加し正常化した。一方くる病治癒に6μg/kg/日の1α(OH)D_3を要した1症例では24,25(OH)_2D濃度は低値が持続した。また幼児期にくる病および禿頭を呈した本症の2成人例では治療中止後14年間、再発しなかった。しかし血中1,25(OH)_2D濃度は高値、24,25(OH)_2D濃度は低値を示した。1,25(OH)_2Dにより受容体系を介して24水酸化酵素は誘導され、24,25(OH)_2Dが生成される。したがって24,25(OH)_2D濃度は治療の指針として有用であると考えられる。しかし1幼児例および2成人例の結果から1,25(OH)_2D_3による骨形成能および24水酸化酵素誘導能の感受性に差異が認められた。次に本症の培養皮膚線維芽細胞を用いてビタミンD作用経路の障害について検討した。いずれの患者も細胞質受容体は正常であったが、〔^3H〕1,25(OH)_2D_3の核への取り込みが障害されていた。さらに核に取り込まれた〔^3H〕1,25(OH)_2D_3受容体複合体を種々濃度のKClにより抽出すると、正常対照と同様210mMで抽出される症例と90mMで抽出される症例が見られた。したがってDNAへの取り込みの障害のある症例にはそれぞれ異った受容体変異蛋白を有する2亜型の存在することが考えられた。また細胞内受容体系を介した1,25(OH)_2D_3による24水酸化酵素の誘導能を検討した。正常対照では10^<-8>〜10^<-7>M1,25(OH)_2D_3により本酵素は最大活性を示した。一方5症例の線維芽細胞では酵素の誘導は見られなかった。以上本研究を通して、ビタミンD依存性くる病II型の異質性およびビタミンD代謝における受容体の役割を明らかにした。
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