研究概要 |
(1)起始部欠損SV40・DNAをジストロフィー筋細胞初代培養系に導入し形質転換ジストロフィー筋細胞株を樹立した. (2)ジストロフィー筋細胞クローンは, 血清存在下の培養では, 正常筋クローンと同等の高増殖能を維持し, 更に, 合成無血清培地中では, 未熟筋管細胞の形成 M型CKアイソマーの合成を示し, 正常骨格筋細胞クローンと同レベルの分化能を示した. この分化段階での細胞膜構成蛋白成分は, 正常筋クローンとジストロフィー筋クローン間に差はなく, 又, 培養液中に分泌, 漏出される高分子成分の量にも有意の差を認めなかった. 即ち, 未熟筋管細胞の段階では, ジストロフィー筋は, CKなどの蛋白を漏出し易いという性質は認めなかった. 以上, 癌遺伝子をヒト培養筋細胞に導入し, デュンシャンヌ型筋ジストロフィー症の筋細胞を高増殖系, かつ永久継代培養系としてクローン化することに成功した. 初代培養系が不均一かつ有限増殖系であることを考えると, 均一の高増殖系クローンが得られたことは, 細胞病態の検索に大きく役立つ成果であると思われる. 又, これらクローン化筋細胞を用いて, 未熟な分化段階での種々の形質を検索したが, 一次的筋管細胞レベルでは細胞の増殖, 膜成分などは異常ではなく, この分化段階ではジストロフィー遺伝子産物は表現されていない可能性を示唆した. クローン化細胞の確立は成功した今後, より進んだ分化段階を誘導する条件を検討し, 遺伝子配列から得られた合成アミノ酸に対する遺伝子産物への抗体を用いて, ジストロフィー形質の病態の検討を進める予定である.
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