研究概要 |
(1)外科的に切除したケラドアカントーマを体外でディスパーゼ処理により真皮成分の混入なしに腫瘍細胞塊を得た. この腫瘍塊よりcytosol分核を採取し, この中の細胞内レチノイン酸結合蛋白(CRABP)の定量をゲル濾過法に基づいて行てった. 即ちcytosolを^3H-レチノイン酸と暗所でincubateレセファデックスG75カラムクロマトグラフィーにかけ各フラクションを採取し, 分子量約15,000のピークの放射活性量からGRABP濃度を算出した. その結果, 腫瘍細胞中には約60pmol/mg蛋白の濃度で存在することが明らかとなった. これは従来報告されている正常人表皮におけるGRABPの濃度4.0pmol/mg蛋白よりははるかに高濃度である. (2)長期エトレチネートを服用している角化量常症状, 皮膚腫瘍患者の血中エトレチネート濃度及び活性代謝物であるRo10-1670濃度の解析を高速液体クロマトグラフィーを用いて行なった. その結果, これら患者の血中薬物濃度は必ずしも効果発現に相関しないことを証明し, 報告した. このことより尋常性乾癖・掌蹠角化症並びに皮膚腫瘍におけるビタミンAの効果は血中濃度よりも皮膚病多部における結合親和性に依存る可能性の高いことが示唆された. (3)ビタミンA類縁化合物E-5166の培養表皮ケラチノサイトの分化に及ぼす影響につき検索した. E-5166は他のレチノイドの様にシクロヘキセニル環をもたないがCRABPへの結合親和性が高いことが知られている. 培養液に添加する牛胎児節制を脱脂処理し培養液中のビタミンAを完全に除去するとケラチノサイトの角化傾向は強くなり, 生体表皮でみられるような角質層を形成した. これに10^<-7>MのE-5166を添加することにより角質層の形成が阻止され, 高分子ケラチン蛋白の産生がおさえられる結果を得た.
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