研究概要 |
肝癌に対するリ・ヒオドール門脈塞栓術の研究は, 次のような項目で行った. 1.本法の碑癌部肝実質に対する影響 リピオドールを用いた肝動脈塞栓術後に肝動脈・門脈短絡を介して, リピオドールが門脈内に進入したことをX線的に確認できた3例の切除肝で病理組織学的検討を行い, I例で肝実質に1cm×2mの梗塞を認めた. また, X線的にリピオドールが門脈内に入ったことが確認できなかった症例でも, 小さい肝梗塞を認めた症例があり, 本法に肝動脈塞栓術を併用した場合, 非癌部肝実質に梗塞をおこす可能性のあることが明らかになった. 2.門脈内リピオドール注入法の開発 (1)4例の非切除肝癌に対して, 外科的に門脈に挿入したチューブに血管造影用シースを接続し, これを介しているTr細カテーテルを目的の門脈枝に進め, 肝動脈塞栓術に引き続いて抗癌剤混和リピオドール1.5mlを注入した. (2)1例の非切除肝癌に対して, 前腹壁より21G穿刺針で左葉門脈枝を穿刺し, 3Frの細カテーテル目的の右葉内門脈枝に進め, 抗癌剤混和リピオドール2mlを肝動脈塞栓術に注入した. 他の1例では, 左葉内門脈枝穿刺後に血圧低下をきたし, 門脈塞栓は中止した. 3.本法施行後の臨床検査的, 画像的経過観察. 本法施行症例の術後の経過は, 1例で翌日消化管出血を経験した以外, 肝動脈塞栓術単独施行例と比較して, 特に重篤な副左様は認めなかった. 4.本法の適応. 本法と肝動脈塞栓術の併用は, 肝梗塞をおこす可能性があり, 高度肝硬変症例は対象とならない. また, 門脈塞栓の範囲は, 左葉あるいは右葉のいずれかに限定する. 施行例は, すべて非切除例であるため, 本法の有効生は, 今後の経過観察で評価する.
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