研究概要 |
老年期痴呆患者の脳波を定量分析し, その左右差について頭部CT所見および心理検査所見との対比検討を行った. [対象]老年期痴呆患者79例・うち脳血管性痴呆(VD)48例, 萎縮性痴呆(DAT)31例. [方法]左右の前頭, 側頭, 中心, 後頭の計8部位の脳波を波形認識法による脳波基礎活動分析装置を用いて定量分析し, 8つの周波数帯域ごとに出現量(wave%time)を算出した. 左右の対称部位で各周波数帯域の出現量の差を求め, その絶対値が5%以上の場合に左右差有りとし, 徐波の出現量の多い側を脳波の障害例とした. CT所見は, VDでは低吸収域(LDA)やperiventricular lucency(PVL)の部位・程度により, 1群 LDAが左側優位にあるもの(12例), 2群 LDAが右側優位にあるもの(11例), 3群 LDAが両側同程度にあるもの(6例), 4群 LDAがなくPVLが中心であるもの(14例), 皮質萎縮・脳室拡大のみを示すもの(5例)の5群に分類した. DATでCT上左右差のあるものは31例中1例のみであった. [結果](1)VDでは脳波上徐波の出現量の左右差が48例中45例(94%)に認められた. (2)VDのうちCT上でLDAを示した29例(1〜3群)では全例が脳波上徐波の出現量の左右差を示したが, 脳波の障害側はCTの障害側と一致しなかった. (3)VDを長谷川スケールの成績で高得点群(22点以上)および低得点群(22点未満)の2群に分類し検討したところ, 高得点群については脳波障害側がCT障害側と一致する傾向が認められた. (4)VDのうちCT上で基底核付近にLDAを示した13例について見ると, 全例で脳波の障害側とCTの基底核障害側が一致していた. (5)一方, DATでは脳波上徐波の左右差を認めたのは31例中10例(32%)であった. 左右差を認めた例は長谷川スケールの低得点群に属するものが多かった.
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