研究概要 |
インスリン依存性糖尿病(IDDM)が免疫異常によって発症することは動物実験および欧米の臨床研究から明らかにされた. しかし, 日本人のIDDMの発症頻度が欧米の10分の1であり, 全例が免疫異常によって発症しているとは言いきれない. 免疫療法をおこなう適応はまだ膵β細胞が残存し, 免疫異常によって生じている症例と考えられたので, 小児糖尿病について, HLADR〓およびDR9を有するもの, ICAまたはICSAが陽性のものをスクリーニングし, グルカゴン負荷試験でC-ペプチドが増加する症例を選別した. しかしインスリン療法を必要としたIDDMは全例ともC-ペプチド反応が低下し, 残存膵β細胞が殆どないことが判明した. これらにピンバニル(OK-432)を0.1K〓から1.0K〓投与したが, 糖尿病の緩解に導入出来ずインスリン需要量を節約することに成功しなかった. 1例ICSAが陽性になり〓型がインスリン非依存性糖尿病(NIDDM)でIDDMに進展すると予測される症例を追跡しているが, 現在経口血糖降下剤でコントロールされ, 免疫療法を開始する時期を見守っているが, 現在のところ適応と考えられていない. 1年間の臨床研究により, 日本人のIDDMが免疫異常によって発症する症例が稀ではないかと疑っており, IDDMの免疫療法に関し充分に注意すべき問題点があることが分ってきた. サイクロスポリンのように腎毒性の強い薬物を使って免疫療法をおこなうことに対する反省と, 批判があり, 日本人のIDDMの適応にはならないと考えられた. 膵β細胞が残存するIDDMを早期に発見し, 免疫療法をおこなうことが試みられておりグルコース刺激に対するインスリン分泌が障害されはじめた初期糖尿病に免疫療法をおこなうべくスクリーニングをはじめている. 将来このような症例に限定し, OK-432を使用し, 予防降下の有無をみるべきであるとの結論を得た.
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