研究概要 |
1.我々は, ヒトPTH遺伝子の5′隣接領域に存在して, その転写調節に関わるDNA配列(cis-acting element)について研究を進めてきたが, 本年度の研究から(1)遺伝子の基本的な発現を促進し, ビタミンDによる抑制的調節をメディエイトしていると思われるDNA領域を同定した(上流ー353〜ー212bp). この部分を介してみられるビタミンDによる調節は, 10^<-10>Mという低濃度より観察され, さらに活性型である1.25(OH)_2D_3に特異的に見られた. (2)ー92〜ー69bpの部分にヒトPTH遺伝子発現に不可欠な機能が存在することがわかった. これについてはー85bp付近に認められる逆向きのCATboxが関係するものと思われた. (3)さらに上流ー3.6〜2.4Kbpの部分に基本的な転写活性を大きく抑制するいわゆるサイレンサー配列の存在することを見出した. 2.上記の転写調節機能/DNA配列の関係を更に細かく解析するため, より詳細な変異導入実験を行う予定であったが, 方法論的にゲル・リターディションアッセイ/フットプリンティング法による解析とin vitroトランスクリプションによる検討の方が容易かつ発展性に富むとの判断から, これらの実験を先行させることとした. ヒトPTH遺伝子のプロモーター活性を正しく発現するラット下垂体GH_4細胞と, 手術で得られた副甲状腺腺腫組織の核抽出液を用いて行なったゲル・リターディションの予備実験から, 我々はそれぞれに少なくとも一つの蛋白性因子がー353〜212bpのDNA断片に特異的に結合することを見出した. DNaseIフットプリンティング法による詳細な結合部位の同定, アフィニティカラムによる細胞性因子の精製を進めている所である. 3.ラットを用いたin vivoの灌流実験系で, PTH遺伝子の発現が24〜48時間という比較的長く継続する血中Caの変化によって調節されていることを明らかにした.
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