研究概要 |
ビタミンB_<12>の欠乏の結果生ずる巨赤芽球性貧血(悪性貧血)では骨髄造血細胞に特徴的な形態異常がみられるが同時に種々な生化学的異常もきたし細胞の早期崩壊につながると考えられる. 生化学的異常は主としてDNA合成障害と関連するものである. B_<12>欠乏は活性葉酸代謝に異常をきたすと同時にメチオニン生成の障害も伴う. メチオニンの相対的欠乏がこれまでに知られているDNA合成異常の一部をおこし得ることを明らかにしたので, 今年度の研究においてはさらに, DNAのメチル化反応に関連した異常について検討し, 以下の成績を得た. 1.葉酸およびビタミンB_<12>欠乏メディウムでマウス白血病細胞L1210を培養すると葉酸欠乏状態の細胞が得られる. これを種々なメチオニン濃度として増殖させ, DNA合成障害の出現との関係をみると, メチオニン添加量の多寡により葉酸の必要量が変化し, メチオニン低濃度条件では葉酸欠乏による代謝異常が顕著となった. これはヒト悪性貧血骨髄細胞の観察所見とよく対応するものである. 2.メチオニンはメチル基供与体として重要であることから, 低メチオニン状態にあるヒト悪性貧血骨髄細胞DNA中のメチルシトシン比率を測定した. 方法は細胞DNAの調整後, 蟻酸分解して塩基とし, 高速液体クロマトによった. RNA混入のない試料を悪性貧血6例, 急性白血病5例, 対照5例から得た. メチルシトシンの総シトシンに対するモル比はそれぞれ(平均±SD), 3.9±0.2%, 3.9±0.2, 3.8±0.2であり, 悪性貧血で有意に低下するとの知見は得られなかった. 3.2と同様の見地からオンコジーンC-mycのメチル化状態をSouthern Blot法で検討した. 制限酵素分解の後エクソンIIIに対するプローブを用いた. 一部の例で低メチル化状態が示唆された.
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