研究概要 |
1.AIDSウイルス(HIV)保有者のAIDS発病の予知に有用なマーカーを得ることを目的として, 血友病患者の末梢血リンパ球内に出現するHIV抗原(p24)を検索し, 他のマーカーとの比較検討を試みた. 2.血友病患者の末梢血より単核球を分離し, PHA,IL-2,polybreneと共に10日間培養した. この培養単核球の塗沫標本を固定し, 抗HIVP24モノクローナル抗体(VAK5)を使用した間接蛍光抗体法によって, リンパ球内に発現するHIV抗原(p24)を同定した. 同時に, 患者血清中の抗HIV抗体を, Serodia-HIV法とELISA法で測定した. また, 末梢血リンパ球の膜抗原を各種モノクローナル抗体とflow cytometryを用いて解析した. 3.血清中の抗HIV抗体は, 血友病36名中25名(69%)が陽性で, 内訳は血友病A20名中11名(55%)が陽性, 血友病B14中13名(93%)が陽性, von Willebrand病2名中1名(50%)が陽性であった. リンパ球内のHIV抗原は血友病36名中7名(19%)が陽性であった. 内訳は, 血友病A20名中5名(25%)が陽性, 血友病B14名中2名(14%)が陽性であった. なお, HIV抗原陽性者はすべて抗HIV抗体陽性であった. 抗HIV抗体陽性者のうちHIV抗原陽性者は28%であった. 4.抗HIV抗体とHIV抗原を指標として血友病患者を区分すると, A群(抗体陰性・抗原陰性)は12名, B群(抗体陽性・抗原陰性)は17名, C群(抗体陽性・抗原陽性)は7名であった. この圧分とリンパ球の膜抗原の解析結果を統合すると, CD4/CD8比の平均がA群は1.35, B群は0.66, C群は0.59であり, A群と比べB群とC群は有意に低く, HIV保有者の細胞性免疫能の低下が確認された. また, C群7名中2名はARC状態であり, 他の1名はAIDSを発症して死亡した事実から, HIV抗原の検出は発病を予知するマーカーとして有用なものであることが示唆された.
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