研究概要 |
悪性腫瘍に蓄積性を有する光感受性物質を投与し, レーザー光線による励起光線を照射する悪性腫瘍の肉眼的診断および治療(photodynamic diagnosisおよびtherapy)の臨床応用を行なった. 光感受性物質としてはeosin yellow(eosin Y)を用い, レーザー光線としてはアルゴンレーザー光(波長514.5nm)を使用するphotodynamic diagnosisを食道癌に対する転移リンパ節の判定, および腫瘍摘出後の腫瘍遺残の有無を術中肉眼的に判定する方法として応用した. Eosin Yの投与量は10mg/kgとし, 手術48時間前に点滴静注した. 術中摘出標本を黒色の紙上におき, 15cmの距離からレーザー光線(出力400mw)を照射した. その結果, 食道癌11症例について, 癌巣には全例に蛍光がみられ, 外膜および脂肪組織では全例に蛍光がみられなかった. また, 転移リンパ節22個中21個(95%)に蛍光がみられ, 非転移リンパ節26個中25個(96%)に蛍光がみられなかった. 以上の結果から, Ensin Yとアルゴンレーザー光照射を組み合わせた食道癌に対する術中のphotodynamic diagnosisは施行可能であると考えられた. 次に, photodynamic therapyの検討のために, マウス皮下に移植腫瘍を注入し, 径7-10mm程度に成長した時点で照射前にEosin Yを100mg/kgを注入し, アルゴンレーザー光線の腫瘍内照射を行なった. Photodynamic therapyの効果の程度, 殺細胞効果の発現時期は腫瘍容積の変化および摘出腫瘍の組織学的所見にて検討した. その結果, 治療効果は治療後早期にみられた. また, 治療群では組織学的に癌巣のみられないものが対照に比べ多くみられた. 以上の結果から, Eosin Yとアルゴンレーザー光線によるphotodynamic therapyが悪性の瘍に対して施行可能であると思われた. しかし, アルゴンレーザー光線は組織通過性が悪いため, 臨床応用に際しては透過性のよい他のレーザーを使用したphotodynamic therapyを施行すべきであると思われた.
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