研究概要 |
雑種犬を用いて、成犬(平均体重21kg)6頭(A群)、と幼若犬(生後1ケ月以内、平均体重1.4kg)5頭(B群)の両群間での、全脳虚血後の脳機能回復の過程を^<31>PMRS及びEEGを用いて観察し、比較検討した。<方法>あらかじめ両側椎骨動脈、浅頸動脈、肋骨頸動脈を結紮した上、左総頸動脈は、血液ガス測定用カテ-テルを挿入して結紮した。更に右総頸動脈を一時的に結紮して全脳虚血状態を作製した。 平均15分間の血流遮断により、MRS上、ATPのピ-クが正常値の30%に低下した。この時点で右総頸動脈を再開通し、平均4時間にわたって、MRS及びEEGの回復の程度を観測した。 MRSはPhospho Energetics社製動物実験用MRS(2.1Tesla)を用い、頭頂部においた直径2cmの表面コイルから得られた^<31>Pスペクトロムを4分毎に積算して計測した。EEGは、α,β,γ,δ波のそれぞれにつき、パワ-スペクトルム表示して定量した。<結果>(1)MRS:αー,βー,γー,ATP及びPC_r,はA.B両群とも血流再開後30分で正常値の80%まで回復し、両群間に差をみとめない。しかし4時間後には、B群では正常値まで完全に回復するのに対し、A群では80ー90%の回復にとどまり、完全に回復する例をみとめなかった。一方Piは、B群では早期から正常値に回復するのに対し、A群では回復に4時間を要した。(2)EEG:EEGは虚血後MRS上変化をみとめない時期にすでに明らかな変化を示し、AB両群共、虚血後数分で脳波活動の消失をみとめた。血流再開後は明らかにB群で早期に回復の兆しをみとめたが、A群はMRS上の回復がみられても脳波は回復しなかった。 <考察>MRS、EEGにより観察された全脳虚血後の脳機能の回復は、幼若犬群が明らかに成犬群より優れ、急性脳損傷に対する幼若脳の可塑性が示された。又MRSは非侵襲的に脳代謝を測定可能であることが示された。
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