研究概要 |
腎で生成される循環ホルモン系と腎内血行動態との相互関係に関する研究の一環として, ウサギを用い, 2腎・1クリップ型腎血管性高血圧及び片側尿管閉塞性水腎を作成, それぞれの急性期(1週間目)及び慢性期(10週間目)における血圧, 血漿レニン活性, 処置腎及び対側腎の血流量, 皮質及び髄質組織内血流量, 尿量, Na及びPGE_2の動向を観察, さらにフロセミド, ニフェジピンの影響についても検討し, 次のような結果を得た. 1.腎血管性高血圧急性期には, 処置腎血流の低下, レニンの上昇を伴った高血圧がみられ, 対側腎の尿量, Na及びPGE_2の排泄が増加した. フロセミドはこれらの排泄を促進することにより, ニフェジピンは腎組織血流量を増加させることにより, 血圧を下降させた. 2.腎血管性高血圧慢性期には, 高血圧は持続するが, レニンは正常化し, 対側腎のNa及びPGE_2排泄能も旧に復した. しかしこの時期においても, フロセミド, ニフェジピンの影響は急性期と変らなかった. 3.水腎急性期には, 血圧の変動はみられなかったが, 処置腎の腎盂内圧上昇とともに, 両側腎の髄質組織内血流量の減少がみられ, フロセミド, ニフェジピンはいずれも腎組織血流量の一過性増加と尿量, Na及びPGE_2排泄量の増加をもたらした. 4.水腎慢性期には, 処置腎の血流障害が高度となり, 髄質から皮質にも及ぶが, 対側腎髄質の血流障害は軽減し, 尿量, Na及びPGE_2排泄量は増加する. この時期にも, フロセミドは尿量, Na及びPGE_2排泄量を増加させるが, ニフェジピンの影響は急性期に比して低下した. 以上の結果は, 腎障害の原因や時期によって腎内血流の分布が異なり, 尿量や電解排泄が変化することを示すとともに, これらに対する腎循環ホルモンの影響を示唆するものである.
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