研究概要 |
妊娠高血圧症発症の病態を解明すべく, まずは臨床的に正常血圧例を対照として, 妊娠高血圧例の循環動態を妊娠経過を追って検討した. 予備実験として, 本研究の主たる備品である非観血的連続心拍出量モニターが, 妊婦においても信頼しうる成績を得ることが可能か否かにつき, スワンガンツを用いた熱拡散法との比較検討を行った. その結果r=0.78という高い相関性が確認された. 妊婦心拍出量は妊娠高血圧症, 正常血圧症例いづれも, 妊娠初期より増加し, 24週をピークとして, 以後32週を過ぎる頃より減少傾向がみられる. そして妊娠高血圧例では, その減少傾向が正常血圧例に比し一層著しい. また両症例とも, 側臥位より仰臥位にて減少が, 32週を過ぎる頃から認められる. 一方, 血管抵抗は, 両者とも妊娠24週迄低下し, その後32週を過ぎる頃より漸次上昇する傾向をみる. とくに妊娠高血圧例では妊娠経過を通じて高い血管抵抗を呈している. なお抑臥位は側臥位よりも早くから血管抵抗のたかまりをみる. こうした成績は, 臨床的にも妊婦抑臥位での官現の妥当性を仄めかしている. そして, こうした血管抵抗のたかまりを招く誘因につき, 昇圧系液性因子から求めてみたが, カテユーラミンズ, RAA系, パゾプレッシン, いづれにも血圧上昇と正の相関が認められず, 昇圧系物質の妊娠高血圧発症への直接的関与は否定された. そこで, 妊娠高血圧を招く臨床的背景因子から, 子宮内圧の変動に着目し, 動物実験による内圧上昇にて, 胎盤, 腎血流減少が生じ, これが子宮-腎反射を介することを既に循環面より明らかとした. それを今回腎神経を介していることを電気生理学的に証明した. 更に今後, こうした胎盤, 腎及血により招来される〓性因子としてのPGs, ホルモンなどの血管壁への影響を探る.
|