研究概要 |
眼内炎症の惹起には各種エンドトキシンを足掌に注射して眼に触れずに眼内炎症を起こした. その経時的変化を前房水中の蛋白量, 細胞数測定で定量的, 客観的に測定した. 1.ラットにおいては前房内の蛋白及び細胞はほぼ時期を一つにしてやや蛋白の方が早く増え始め, 注射後約3時間から4時間で最も強い反応を示し, それから後は徐々に減少して24時間後にはほぼ正常にかえった. それに反して家兎では蛋白の増加は3〜4時間をピークに見られるが細胞増多はそれより更に遅れ, 注射後6時間後から出始め24時間或いは48時間後が前房中に細胞が認められた. このように動物の種によって炎症の現われ方には違いがあることがわかった. 2.各時点での前房水中のアラキドン酸代謝物のRIA法による測定, プロスタグランディンA, B, E_2, F_2α, トロンボキサンB_2, プロスタグランディンI_2の代謝物である6-Keto, PGF_2α, LTB_4の測定を行なった. その結果種々のプロスタグランディンの増強は炎症の増加と共にやや上昇を見るが, 顕著な上昇は見られず有意の差はなかったがその中にあってPGE_2はラットにあっては蛋白の動きとほぼ平行な増加減少の曲線を描いた. 又, LTB_4ではラットにおいてはほぼPGE_2と同様の動きを示した. それに対し家兎では最初にPGE_2の増加が起こり, それに引き続いてLTB_4の増加が認められた. その曲線のズレは丁度前房水中の蛋白及び細胞の動きと一致しており蛋白の増加と共にPGE_2の増加現象があり, 更に細胞の増加と共にLTB_4の増加が認められた. 家兎においてはこのように炎症のパラメータである前房水蛋白と前房水中細胞数の出現の時間的な分離がされており, それに伴なって眼内化学伝達物質であるPGE_2, LTB_4の動きが一致しており興味ある結果を得た.
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