研究概要 |
子宮癌ではパピローマウイルスが高率に癌細胞DNA内に検出されることからその原因ではないかと考えられてここ数年間盛んに研究されているが, 口腔癌においてもパピローマウイルスがその原因である可能性が考えらるようになっている. 我々は口腔癌及びその関連疾患におけるパピローマウイルスについて組織学的観察, パピローマウイルス共通抗原に抗体を用した免疫組織化学的検索, 組織in situ hybridization, Southern hybridi-zation法による検索を行った. また剖検試料やパラフィン包埋試料からのDNA抽出法についても検索した. コイロサイトーシスはパピローマウイルス感染に特徴的な組織変化とされており, 出現頻度を乳頭腫, 白板症, 扁平上皮癌で検索したが, その頻度は乳頭腫で50%ぐらいとかなり高く, 一方免疫組織化学的検索でのパピローマウイルスの検出頻度は低く, 両者は相関しなかった. アビチン・ビオチン法による免疫組織化学的染色は白板症 181例, 扁平上皮癌 155例, 乳頭腫 72例, その他の口腔内の上皮や結合組織の増殖性病変をあわせて総計553例で行なったが, 検出出来たのは乳頭腫の2例(3%), 白板症の1例(0.5%)であった. ビオチン・ストレプトアビジン法によりパピローマウイルスのタイプ1, 6, 11, 16, 18を混合してプローブとしたin situ hybridizationを扁平上皮癌, 白板症, 疣贅状増殖の4例で行なったが, いずれも結果は陰性であった. Southern hybridizationによる検索では口腔扁平上皮癌の剖検例の1例で原発巣は陰性であったが, 転移巣で陽性であった. 病理解剖例では5, 11時間経過した剖検例からのDNAの抽出を行なったが, これらの試料を用いても検索できた. ホルマリン固定, パラフィン包埋された試料から抽出したDNAは小さく分断されていたので, ドット・ブロット法による検索の試料と出来ることが分かった.
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