研究概要 |
高等動物のCa調節機構に関与するホルモンとしてPTH・1α,25(OH)_2D_3・カルシトニンが知られているが、他のホルモンもその役割を荷っている可能性が考えられる。その1つとして下垂体前葉ホルモンであるプロラクチン(LTH)が哺乳類や魚類に対しCa調節ホルモンとしての可能性が示唆されている。申請者は、LTHがラットの血清Ca値上昇・骨細胞のCa取り込み促進・骨細胞形態変化(活性化)を誘起することを見出し、Ca調節へのLTHの役割を支持すると共に、その機構解明を目的に研究を続行してきた。 本研究は、骨吸収に主役を演ずる破骨細胞に対しLTHの作用を形態的・機能的両面より検索した62年度の実績をより詳細に分析することが出来た。 材料:破骨細胞はラット(19〜20日目胎児)及びマウス(新生児)の頭蓋冠または長幹骨より採取し、通法に従い培養(168時間)を行い、その間LTH(200μg/ml培養液)を添加し破骨細胞様多核細胞の出現数の変動を調べ、さらに酒石産抵抗性産ホスファターゼ染色・象牙質切片による骨吸収能詮索を施し多核細胞の性状を調べ、破骨細胞の形成に対するLTHの影響を詮索した。猶、LTH無添加を対照群とした。 結果・考察:ラット・マウス各細胞に対するLTHの作用は同効果を示した。 1.破骨細胞様多核細胞数:対照群では経時的に激滅するが、LTH群では著しい出現率の増大が認められた。添加時期を変えることによりこの細胞は新生された細胞と考えられた。 2.破骨細胞のマーカ酵素TRACP検出:LTH群で増加出現した多核細胞はすべて陽性であった。更に陽性の単核〜三核の細胞が著明に出現した。 3.骨吸収能の有無:LTH群でクジラ象牙質切片上の吸収窩は対照群と同様多核細胞により形成されることが認められ、また小さな吸収窩が多く観察された。特記すべきは二核細胞も吸収能を有していたことである。 以上によりLTHが破骨細胞形成に対し分化誘導能を有することが初めて明白となり、Ca調節ホルモンとしての役割が強められた。
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