研究概要 |
対側または同側の中脳, 特に, 下丘腹側に位置し, 楔状核, 中心灰白質外側部を含む領域(中脳parawbrachial area.PBA)へ軸索を送っている三叉神経脊髄路核ニュートロンの1.生理学適性質について, また2.HRP法を用いてそれらの分布について調べた. 1.生理学適性質:尾側亜核からは86個の投射ニュートロンを記録した. 大部分がI層またはV層に分布するNSまたはWDRニュートロンであった. それらは対側または同側に投射していたが, I層からは対側優位であった. 一方, 中間亜核から主感覚核にかけて55個の投射ニュートロンを記録した. それらの約半数は核内に分布するLTMニュートロンであり, 残りは隣接する網様体または核の辺縁部に分布する侵害受容性ニュートロンであった. また, 対側投射優位であった. 以上の結果は, 尾側亜核と吻側の脊髄路核では投射ニュートロン分布様式や種類の割合が異なるが侵害受容性ニュートロンが多く, このことはこの系が顔面・口腔領域における侵害受容に大きな役割を果していることを示唆する. 2.分布:逆行性HRP法を用いて, PBAに投射する三叉神経感覚核ニュートロンを標識し, 核亜核におけるそれらの分布を調べ比較検討した. 尾側亜核ではI層及びIV, V層に多くの標識細胞が出現した. それらは両側にみられたが対側の方が多く, また閂から1〜5mm尾側部に多かった. 閂より吻側では, 中間亜核に多くの標識細胞が見出され, 吻側亜核では減少し, 主感覚核では小数であった. それらは核の内部に分布していて両側性に出現したが, 対側優位であった. なお閂付近では, 三叉神経傍核にも標識細胞が見出された. このような標識細胞の分布は先に電気生理学適に得られた投射ニュートロンの分布と基本的に一致し, 各亜核において特徴があることがわかった.
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