研究概要 |
雑種成犬の前歯および前臼歯の頬側面歯頚部にラバーダム防湿下にて円柱窩洞をできるだけ均一になるように形成した. 窩洞の深さは露髄直前までとし, 減菌生理食塩水で窩洞を十分に洗浄後, 減菌された探針で歯髄を点状に露出させた. 歯髄露出面には対照群では水酸化カルシウム製剤を, 実験群ではトリカルシウムフォスフェイトを貼付し, カルボキシレートセメントで暫間修復を行った. 処置後2週間および3週間にて酢酸鉛(3mg/kg)を静脈内に投与し, 処置後4週間にて動物を屠殺して被験歯を取り出した. 被験歯は中性ホルマリンで固定後, 硫化水素飽和の0.2N塩酸で脱灰し, 凍結切片を作製して病理組織学的な検討を加え, 以下のことが明らかとなった. 1.対照群では従来の報告と同様に, 一部の実験例で歯髄露出部にデンティンブリッジの形成が確認された. 2.実験群では歯髄の炎症性変化は少なかったが, 現時点まで対照群と比べて新生硬組織の形成が促進された所見は得られなかった. 3.形成されたデンティンブリッジ中には鉛線の沈着が認められており, 本実験において硬組織時刻描記法が覆髄剤のデンティンブリッジ形成の誘導に関する特性を客観的に把握する上で有効であることがわかった. 今後は本実験をさらに継続し, 実験例数を増加して, 1)覆髄材に接する歯髄の炎症性変化 2)デンティンブリッジの形成量の経時的変化について種々のアパタイトと水酸化カルシウムの比較を詳細に検討したい. またテトラサイクリンによる硬組織時刻描記法も応用して末脱灰標本においてもデンティンブリッジの形成の経時的変化を追跡し, その結果を近日中に発表する予定である.
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