研究概要 |
歯科用合金における腐食・変色反応は多くの場合, 溶存酵素還元反応と金属の酸化反応によって構成されていると推定されているにもかかわらず, 歯科用合金における溶存酵素還元に関する研究はほとんどなく, 従って, その還元挙動も不明である. 本研究では歯科用合金の内, 特に腐食・変色の問題となる市販歯科用銀合金, およびそれを構成する純金属, 銀, 銅, 錫について溶存酵素還元挙動を含む電気化学的挙動を検討した. 市販歯科用銀合金としては銅含有合金(銅21%以上)および錫含有合金(錫20%)を試料とした. 試験溶液としてpH4および7に調製したクエン酸塩溶液を用い, 塩素イオンの有無についても検討した. 測定は繰り返しのある電流規制充放電によった. 銅含有銀合金は4〜0.5mA/cm^2の陽分極電流密度により0.2〜0.0V(SCE)に分極された. 塩素イオンの添加は陽分極電位を僅かに低下させ, 条件によっては還元ステップを出現させた. 1mA/cm2以下の低電流密度における溶液撹拌は陰分極電位を著しく貴に移行させ, この電流密度域では溶存酸素の還元が主反応になることが分かった. この様な挙動は純銅に類似であり, 塩素イオンの存在は難溶生の塩化銅の生成を起こすことが明らかである. 錫含有銀合金は4〜0.5mA/cm^2の陽分極電流密度により0.6〜-0.5V(SCE)に分極され, pH7の低電流密度の場合は分極時間の2分間で定常電位に達しない場合もあった. 塩素イオンの存在は陽分極電位を卑にした. 純銀, 及び純錫との比較から, 錫含有銀合金は錫が不働態化しない場合は錫の反応が主となり, 不働態化すると銀が反応することが明らかである. 銀含有含金においても1mA/cm2以下の低電流密度における溶液撹拌は陰分極電位を著しく貴に移行させ, この電流密度域では溶存酸素の還元が主反応になることが分かった.
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