研究概要 |
CTの被曝線量について最も良い表示方法は, 患者への総付与エネルギーと特定の臓器の線量である(ICRP). この報告では, 特定の臓器線量として研究課題のように放射線誘発白血病の原因となる平均赤色骨髄線量を, そして総付与エネルギーとしての積分線量を選んだ. 第3世代のCTには当施設のYMS-9000を対象とし, その回転中心での強度分布半値幅をフィルム法で測定した. その結果, 公称10mmが10.38mm, 5mmが5.64mm, 2mmが2.58mmであり, いずれも実測半値幅は公称スライス幅より大きくなっていた. スライス幅は成人ではMIRD, 小児ではHwangの数学ファントムの頭部楕円の平均直径を乗じたものを照射野とした. モンテカルロ法に用いた50万個の光子スペクトルは, 実測によるX線出力と総濾過, 陽極角度, Bow-Tieフィルタの実データを基礎にコンピュータシミュレーションによって発生させた. モンテカルロ法によるシミュレーションの結果は, 1撮影あたり(120kV, 532.8mAs以下積分線量でも同じ)の赤色骨髄の平均骨髄線量は1cmスライス幅では成人の場合日本人(総赤色骨髄量765g)では110-208μGy, 西欧人(総赤色骨髄量1500g)では173-376μGy, 小児の場合日本人(総赤色骨髄量328.4g)で64.0-120μGy, 西欧人(総赤色骨髄量401.3g)では67.0-136μGyとなった. 数値に幅があるのは顎関節付近の位置による. スライス幅による影響は, 同じ部位の10mm幅を10, 5, 2mm幅のスライスでそれぞれ1, 2, 5枚撮影すれば, それに応じて日本人成人の平均骨髄線量の合計は208.1, 226.7, 259.4μGyとなり, 薄層マルチスライスの方が大きい値となった. 総付与エネルギーは1cmスライス幅で, 顎関節部付近の位置により成人が16.0-18.3mJ, 小児が5.5-6.5mJであった. それぞれ同じファントム故日本人, 西欧人の区別は無い.
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