研究概要 |
ヒトの口腔内より分離したStreptococcus.milleriについて, 歯周病原性Actinomyces.viscosusT14VおよびA.naeslundiiATCC12104との菌体間凝集反応を調べた結果, A.viscosusとは67株中35株, A.naeslundiiとは67株中38株が凝集を起こし, この凝集反応はラクトースによる阻害を受けず, レンサ球菌側の凝集因子が熱やプロチアーゼに感受性であるのに対して, 放線菌側のそれはいずれにも耐性であることがわかった. 次に, A.viscosusT14V菌体を卵白リゾチーム処理(36゜C, 8時間)した後の遠沈上清を5%TCA抽出して得られた可溶性画分(粗AFHI)を免疫原として得た家兎抗血清(抗AFHI抗体)および異なる3の血清型(c,e,f)のS.milleri標準株の全菌を免疫原として得た型特異抗血清を用いて, ActinomycesとS.milleriとの菌体間凝集反応に対する阻害効果を調べた結果, 次のことが明らかになった. 1)抗AFHI抗体はA.viscosusT14Vとの凝集反応をある程度阻害するが抗体濃度を高くしても完全には阻害されない. 又, A.naeslundiiATCC12104との反応はほとんど阻害しない. 2)S.milleriの型特異抗血清はホモ血清型のS.milleri菌体とA.viscosusT14VあるいはA.naeslundiiATCC12104との凝集反応をいずれも阻害するが, ヘテロ抗血清の菌体とそれらとの凝集反応は阻害しない. ホモ血清型S.milleriとActinomycesとの凝集反応に対する抗体の阻害効果はあまり強くなく, 抗体濃度を高くしても阻害効果は増加しないことから, この抗血清の中には両菌体間の凝集反応に関与する因子に対する抗体は含まれていないことが考えられる. 以上のことから, 今後は放線菌より再度, あるいはレンサ球菌より新たに凝集因子を分離・精製し, それを免疫原とする特異抗血清を用いて, 菌体間凝集反応の阻害性を調べることが必要であると考える.
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