研究概要 |
〔研究の目的〕近年, 低年齢児の齢蝕は全国的に減少傾向にあるが, 依然高い有病状況を示す地域もあり, 地域格差のあることが示されている(片山ら, 1986a,b;長田ら, 1987a,b). 低年齢児の健康度が一般にその時代の地域の保健および社会特性に影響されていることから, 本研究は都道府県別の社会特性指標と3歳児齢蝕有病者率との関連性を時系列的に解析し, 地域格差の要因を指定した. 〔研究方法〕47都道府県別の3歳児齢蝕有病者率(S.50, 55および60年)を目的変数とし, 各年度の都道府県別の社会生活統計データおよび地域保健データの30項目を説明変数とする重回帰分析を行い, 3歳児の乳児齢蝕多寡に関連する要因を選んだ. ついで得られた要因を基準としクラスター分析を行い, 類似の地域特性を持つ都道府県を分類し, 地図グラフ化し. 〔結果と考察〕第一次産業従事者割合などの6項目の社会特性因子により, 3歳児齢蝕有病者率の都道府県間の格差の状況が73〜90%(B=0.85〜0.95, P<0.01)程度説明され, 3歳児の乳歯有病の多寡に地域社会特性が強く係っていることが示された. しかし各因子の関連度は年度により異り, S.50〜60年の10年間の社会変動とも時系列的に関連することが示唆された. 一方, 得られた6項目の因子を基準として年度毎に都道府県を分類したところ, 関東, 東海, 中部, 京阪神地分等, 大都市および大都市近郊の府県と, 東北, 中国, 南九州, 沖縄などの地域およびその中間的な地域(北海道など)に類別されることが示され, 3歳児齢蝕有病者率を指標として作図した地図グラフと視覚的にほぼ一致する結果が得られた.
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