研究概要 |
シプソゲニンー3-0-グリコシド(1__〜)のメタノール中ジアゾメタンによる糖-アグリコン結合の開裂反応は既に見出していたので, 今回はこの反応の条件, メカニズムを明らかにし, 新しい糖-アグリコン結合の開裂反応の開発を企図した. また, この反応を構造未知の化合物の構造研究に応用した. まず, メカニズム解明の手掛りとなる副生成物の構造を調べた結果, 1__〜の4α-メチルケトン体であることが判った. また反応はメタノール中以外では進行しないこと, アグリコンに直結したグルクロン酸はメチルエステルにしても反応はおこることを知った. 1__〜の反応生成物の構造から, この反応にはアグリコンの4α-アルデヒド基, アグリコンに直結したグルクロン酸のカルボキシル基及び4位水酸基の関与が考えられる. 反応メカニズムの解明にはこれら官能基の有無を知るのが必要なのでモデル化合物, ジプソゲニンー3-0-グルクロナイド(2__〜)を製造し, 2__〜について官能基の関与を検討した. まず4α-アルデヒド基を4α-カルビノールにしたものでは反応は起こらない. 次にグルクロン酸のカルボキシル基をカルビノールに換えても反応は同様に進行し, また4位水酸基をエチリデンで保護しても反応は起こることから4α-アルデヒド基のみが反応に関与している. このことは合成したジプソゲニンー3-0-テトラヒドロピラニル体も同様な開裂反応をおこすことからも支持される. 以上の事及びジアゾメタンとアルデヒド基との一般的な反応を併せ考えると, 本反応は先ずアルデヒド基がエポキシドになり, このエポキシドをグリコシド結合が攻撃して反応が進行することが判った. キラヤサポニンは2ケ所に糖鎖をもつ複雑なアシル化トリテルペンオリゴ配糖体であったが, 本分解反応により1ケ所の糖鎖のみの切断に成功, その残部の化学的及び機器分析的知見からその全構造を明らかにすることができた.
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