研究概要 |
1.(1)マボヤ精子から, DEAE-セルロース, ハイドロキシアパタイトおよびセファロース6Bを用いた3段階のクロマトグラフィーでキモトリプシン様酵素を精製した. 精製酵素は分子量610Kの高分子で, ディスク電気泳動および等電点電気泳動で一本のバンドを与えるが, SDS電気泳動では数本のバンドを与える. 電子顕微鏡観察ではシリンダー状の形態を示す. また, トリプシン活性をも合わせもつ. 以上の性質は, 本酵素が高分子量多機能プロテアーゼであることを示している. 今後, 本酵素による卵膜消化を調べる予定である. (2)3種のホヤ類での受精に対する3種のキモスタチン誘導体の阻害作用の強さの順序が, 精子抽出液中に検出されるキモトリプシン様酵素に対する阻害作用の強さの順序とよく一致することから, いずれのホヤでもキモトリプシン様酵素がライシンとして機能していると結論した. 2.(1)カルシウムイオノフォアばかりでなく, ホルボールエステルでも卵膜上昇が誘起され, いずれもロイペプチンとカルモジュリン阻害剤で阻害された. さらに, マボヤ卵からカルモジュリンを単離したところ, その性質が哺乳類のものとよく類似していた. (2)百日咳毒素とボツリヌス毒素でそれぞれADPリボシル化される59Kと24Kの蛋白質がマボヤ卵細胞膜に存在することが示された. (3)カルモジュリンやGTP結合蛋白質が卵膜上昇機構にどの様に関与するかが今後の研究課題である. 3.マボヤ卵から, 精子の場合と同様の精製操作でキモトリプシン様酵素を精製した. 精製酵素は, 電気泳動上の挙動, 電子顕微鏡観察, 高分子であり, トリプトシン活性をも合わせもつことから, 高分子量多機能プロテアーゼであることが示された. その性質は精子の酵素とよく類似していた. 本酵素が卵内においてどの様な蛋白質の分解に関与するかが今後の研究課題である.
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