研究概要 |
インスリン非依存型糖尿病においては, インスリン分泌能の低下が見られる. 従って, 糖尿病の本態を知り, 根本的な治療法を開発するためにはインスリン分泌機構の解明が不可欠である. 私共はこれまでに, 唯一の生理的な分泌刺激物質であるグリコースによるインスリン分泌の調節(膵島B細胞によるグリコース濃度の認識)にグルコキナーゼ(GK)が深く関与することを示唆してきた. 以下に記す本研究の結果は, この考えを支持した. 本研究の成果は2報に分けて投稿する予定である. 1.本研究の遂行には精製GKが必要であった. ラット膵島GKと肝臓GKは同一のものと考えられているので, 肝臓のGKを精製した. ホモジネート上清からPhenyl Sepharose, Affi-Gel Blue, Superose12などのクロマイグラフィーにより精製標品を得た. 比活性は126LI/mgであった. Superose12にアプライするサンプルの濃縮に本補助金で購入したMonoQカラムが極めて有用であった. 2.精製GKによるグルコースリン酸化のアノマー優位性を調べたところ, PH, 温度などを変化させても20mM位まではα-アノマー優位であった. これは, 私共が1978年に部分精製標品を用いて得た結果とほぼ同じであり, あるグループが報告したようなβ-アノマー優位性は認められなかった. インスリン分泌のα-アノマー優位性はすでに確認されており, GKもα-アノマー優位であることは, GKがグルコース濃度認識に関与すると考える根拠になる. 3.精製GKをウサギに注射し, 抗体を作製した. これを用いて免疫組織化学的方法により正常ラット膵島内でのGKの分布を調べたところ, B細胞に確かにGKが存在することを始めて証明し得た. しかし, GKはその他の細胞(A細胞など)にも存在することがわかった. また, インスリン非依存型糖尿病モデルラットのB細胞にはGKが少ないことがわかった.
|