研究概要 |
我々は最近ウシ脳の線条体よりコリンアセチル転移酵素(ChAT)を部分精製したのちマウスを免疫し, 単クローン抗体を3種樹立することに成功したが, 本年度はこの抗体を用いて以下の研究を進めた. (1)ChAT蛋白質の精製とアミノ酸配列の解析:上記単クローン抗体をセフアローズに結合してイムノアフィニティークロマトグラフィを作成した. ウシ脳の線条体よりChATを部分精製したのちイムノアフィニティカラムに吸着させ, Tris-HCI暖衡液で洗浄後NaClとUreaによってChATを溶出した. この段階でChATはほゞ純品に近い状態であったが, 微量の混入蛋白質を除くためさらにSDS電気泳動により68KDaのChATを分離溶出した. そのアミノ酸配列を決定するためChAT蛋白をトリプシンやリジンエンドペプチターゼで分解し, 逆層液体クロマトグラフィーにより蛋白質断片を分離する条件を検討中である. (2)ChATのcDNAクローニング:我々が作成した単クローン抗体SDSで変性したChATを認識するので, この抗体を用いてcDNAクローニングを行っている. すなわち, ウシ脊髄前角のPoly(A)^+RNAより二重鎖cDNAを調整し, これを発現ベクターλgtll11に組み込んだのちcDNAライブラリーを作成し, 単クローン抗体でスクリーニングした. その結果7個の陽性クローンを得たがこのうち3クローンは免疫反応が強くお互いに交叉すること, またノーザンブロットでは脳と脊髄に特異的であることから, ChATのcDNAの可能性が大きいと考えられる. このクローンについて制限酵素マップを作成し, 塩基配列も一部決定した. (1)の結果と合わせてこれがChATのcDNAであるかどうかが明らかになるであろう.
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