研究概要 |
我々は, LDL取り込み能異常のホモ接合体細胞(以下MN株と記す)を以前に報告している. 今回, この細胞においてLDLレセプターの生合成過程について35S-メチオニンを用いたパルス, チェイス, ラベルにより調べてみた. MN細胞においては正常レセプターに比べてわずかに小さい分子量の前駆体が合成されており, それらは正常と同様なプロセシングを経て成熟しセプターへと転換した. この細胞及び両親の細胞においては, 他の細胞株においては見られない現象であるが, 成熟体が培地中に分泌されていくことがわかった. 又, 一部の成熟レセプターは細胞膜表面にとどまっていた. 分泌された成熟レセプターの見かけ上の分子量は, 細胞表面に存在するものと比べて約10Kd小さかった. チェイス時間の経過を追った実験から, この分泌型のレセプターは細胞膜結合型のレセプターとprecursor-productの関係にあった. このような事実から, この変異株においては, LDLレセプターは前駆体から一たん成熟体にプロセスされた後, 細胞表面から分泌されていくものと思われる. この変異株において前駆体の分子量が正常のものと比べて小さいところから, レセプター・ポリペプチドに欠失のあることが推察された. さらに, このレセプターは膜結合能に異常があるところから, レセプターの膜結合部位をコードしている遺伝子に異常があることが推測される. 次にこのMN株及び両親の細胞よりケノムDNAを抽出, 精製し, 制限酵素EcoRIで切断してラベルしたLDLレセプターcDNAプローブとハイブリダイズさせ, DNA断片長を正常のものと比較してみた. MN及び両親の細胞では, 正常のものより短かい断片が観察され, MNにおいては遺伝子上に欠失のあることがわかった.
|