研究概要 |
腫瘍プロモーター、12-O-tetradecanoylpherbol-13-acetate(TPA)による皮膚表皮オルニチン脱炭酸酵素(OCD)誘導の不応答性と過剰誘導の現象について検討し、さらに腫瘍プロモーション作用との関連性についても調べた。 1.マウスの皮膚にTPAを複数回塗布する場合、その塗布間隔が12〜24時間の場合、2回めのTPAによるODC誘導に不応答性がみられ、72〜96時間では過剰誘導がみられ、その程度は初回のPTA塗布両に依存していた。 2.腫瘍プロモーションを抑制する物質についてその影響を調べたところ、BPB,NDGA,quercetin,TPCK,retinoic acidにより全く影響がみられなかった。しかし、palmitoylcarnetineを初回のTPAより前に塗布すると、2回めのTPAによるODC誘導の不応答性が解除された。 3.ODC誘導の不応答期にはODC酵素のVmax値に明らかな減少がみられたがpalmitoylcarnitineの処置により、その様な減少がみられなくなった。 4.ODC誘導の不応答期には、protein kinase Cの活性が有意に低下しておりTPAに対する不応答性にはこの活性の低下が関係していることが示唆された。しかし、palmitoylcarnitine処置によりこのprotein kinase Cの活性の低下は回復する傾向がみられたものの再現性がもう一歩で、さらに検討する必要がある。 5.In vitroのマウス表皮細胞の初代培養系でもin vivoでみられた様な不応答性に対応するような現象がみとめられた。 6.腫瘍プロモーション実験において、TPAの塗布間隔を、ODC誘導の不応答性がみられる24時間に設定しても、腫瘍生成に対し充分有効に働くことが明らかとなった。ODCの過剰誘導をひきおこす72〜96時間という間隔が必ずしも腫瘍プロモーション作用にとって最適の条件とは言えないことがわかった。
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