研究概要 |
ゴールデンハムスター歯肉の内縁上皮下には毛細血管がヘアーピン状のループを形成している. 歯肉刺激を与えると, このループは伸展し, 拡張を示すようになる. この時毛細血管ループ尖端部の内皮細胞は, 木の芽が膨化するように分化, 増殖する. ゴールデンハムスターの舌側粘膜下に形成された腫瘍より分泌される血管新生因子は腫瘍細胞周囲に血管を増殖させる. このとき, 血管新生障害剤のプロタミンを投与すると, 内皮細胞に襞状のくびれを生じ, 芽が膨化するようにして増殖しようとする内皮細胞の動きを抑制しているのがうかがわれた. 一方, 同様な部位に血管新生促進剤であるヘパリンを投与すると内皮細胞は著しく伸展して, 結合組織のなかに管腔のない, 内皮細胞の突起を延ばしている. このとき, 伸展している内皮細胞の周囲には基底膜が欠如している. このような動きをする内皮細胞をそのものに培養条件下で血管新生因子, プロタミン, ヘパリンをあたえて内皮細胞の動きをコントロールしている細胞骨格の変化を観察した. その結果によると, 血管新生因子を加えた群と, ヘパリンを加えた群ではストレスファイバーが細胞長軸に平行に配列し, 特に増殖の著しいヘパリン群では細胞辺縁部に多数存在した. 抑制剤のプロタミンを投与するとマイクロフィラメントの網目が小さくなり, ストレスファイバーは出現しなくなる. マイクロフィラメントの合成阻害剤のサイトカラシンを投与するとストレスファバーは消失する. このとき細胞は球形化しプロタミン投与群と同一の細胞形状を示して伸展性が低下した. 新生血管の増殖抑制剤のプロタミンに, このように内皮細胞の運動性を阻害する作用があることから, 内皮細胞の運動性(移動能)が血管新生の大きな因子になっていることが判明した. しかし, 分化増殖能の抑制との関連, さらに周囲に存在する細胞外基質との関連については判明しなかった.
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