| 研究概要 |
咬合力が, 調和のとれた顎位において歯槽骨や顎骨にどのような咬合応力分布を呈するか, また, 調和のとれていない不正な顎位においてどのように応力分布を呈するかを検討することを目的とし, 本研究を行った. すなわち水平的な顎位の差異, いいかえると上下顎の前後的および左右的位置の差異により, 咬みしめ時に下顎骨に生ずる応力分布の差異を, 三次元有限要素法を用いて解析した.
解析方法としては, まず, 乾燥頭蓋骨の顎位データを入力し, 荷重条件の一部とした. つぎに, 下顎骨モデルの形状データ, 材料特性(ヤング率, ポアソン比)および力学的条件(荷重条件, 拘束条件)を大型計算機に入力した. なお, 顎位の設定としては, 下顎に対して標準位, 前後的偏位, 左右的偏位を与え, 条件設定を行った. すなわち, 顎位の前後的な差異に対する条件づけとしては, 下顎の後退位, 標準位, 前突位の3種の位置を設定し, それぞれの顎位において想定し得る咀嚼筋の走行方向を, 荷重条件として設定した. また顎位の左右的な差異についても同様に, 側方位を設定し, 咀嚼筋の走行方向を設定した. 以上の条件下で, 力学的手法すなわち三次元有限要素法により, それぞれの顎位における下顎骨モデルに生ずる応力の分布を算出した. さらに算出結果は, 三次元表示装置を用い, 画像として表示した.
解析結果として, それぞれの顎位における下顎骨に生ずる圧縮や引張りの咬合応力分布の様相が画像として明示された. さらに, 顎位の差異による応力分布の様相の差異より, 種々な知見が得られ, 顎位の咬合状態への影響を明瞭に把握することができた.
なお, 以上の結果は, 昭和62年7月18日, 第9回形の科学会シンポジウム(筑波), および昭和62年10月28日, 第46回日本矯正歯科学会大会(徳島市)において発表した.
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