研究概要 |
[目的・方法] 鍼灸医学の最も根本は経絡・経穴系にある. しかしながら経絡, 経穴系の実態はもとより機能についても不明な点が多い. そこで昨年度に引き続き胆嚢形態を指標に経絡・経穴系の特異的機能を明らかにするため以下の実験を行った. なお, 本年度の実験の特色は前年度の結果を踏まえ化学的負荷に対する経穴の作用を明らかにすることを目的とした. 胆嚢形態の測定は超音波診断装置を使用し, コンピューターで断面積を計測した. 胆嚢形態は吸気時で最大長軸に達した映像を撮影し, これをデータとした. 実験内容は化学的刺激(卵黄負荷), 針通電刺激および卵黄負荷後の針通電刺激とした. 針通電方式は1Hzで快適感覚が生ずる強度で1分間通電, 1分間休止を3回繰り返す方法を原則とした. なお, 使用針は絶縁針で刺入深度は1cmとした. 針通電刺激で使用した部位は足の丘墟穴, 丘墟穴の傍らの非経穴部, 手の合谷穴, 腹部の日月穴, 背部の胆兪穴である. 先ず卵黄負荷による胆嚢形態の変化を, 継いで各経穴部位の針通電刺激における胆嚢形態の変化を, 続いて卵黄負荷後の針通電刺激における胆嚢形態の変化を観察した. 胆嚢形態の測定は刺激前10分間, 刺激中, 刺激終了後60分間とした. また, 卵黄負荷だけの場合は約120分間観察した. [結果] 卵黄負荷30分時で丘墟穴に針通電を京ったところ胆嚢の収縮は抑制された. これに対して傍らの非経穴部では丘墟穴に比べて抑制作用は小さかった. なお, 手の合谷穴刺激では丘墟穴と同様に収縮を抑制される作用が認められた. しかし, 合谷刺激だけの場合は収縮, 拡張の両作用を示した. 腹部および背部の経穴刺激はあまり胆嚢形態に変化を及ぼさなかった. [まとめ] 以上のことなら胆嚢形態の枠組からみた経絡, 経穴系の特異的機能について経穴間に作用の違いがあることをある程度明らかにすることが出来た.
|