研究概要 |
物理学等に現れる大規模線形方程式とその開法について研究した. とくに格子ゲージ理論の動力学的シミュレーションを, フェルミオン行列のLU分解の更新に基づいてMetropolis法を実行するアルゴリズムを開発し, 東京大学大型計算機センターのスーパーコンピュータS810およびS820上で実行した. モンテカルロ法においては, 1回の更新で変化する行列要素は6×6のブロックなので, ランク1更新を6回行えばLU分解を修正することができ, 計算時間は直接分解の10分の1ですんだ. 誤差の集積も数千回程度では10^<-10>以下であることを確認した. 以上の方法により, 従来のランジェバン法などでは実行不可能であった. 極めて軽いクォークに対するシミュレーションを行うことが可能になった. 本研究ではテストデータを取っただけであるが, 今後大規模なシミュレーションを実行する予定でる. あわせて, 前処理付き共役残差法のベクトル化について研究を行った. このような反復開法においては, 前処理による反復回数の減少とともに, 前処理自体の高速化が問題となる. 本研究では, 不完全LU分解前処理を, 超平面法でベクトル化した場合と, 16色法でベクトル化した場合を比較した. 加速パラメータを適当に選べば後者の反復回数は前者の2倍程度になるので. もし1回の演算時間が半分以下になれば, 16色法が有利になることを示した. 演算時間はアーキテクチャ依存性が大きく, 一般的には議論できない. 以上のように, 本研究ではスーパーコンピュータを長時間走らせることにより, 大規模な線形方程式に対するアルゴリズムを実際的に評価した.
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